線香花火【短編】
「美弥…ごめんな。俺がいなかったから……我慢したんだろ?」

「なんで純が謝るの?」

ゆっくりと純の顎が私の肩に乗る。

純が囁く。

「何が有った?」

さっきの光景がフラッすバックする。


息が苦しくなってくる。

呼吸が出来ない。


私は、苦しくなり頭を掻き毟った。

そんな私の豹変ぶりを見て、ビックリしながらも力強く止めてくれる純。


数分後、私は純に抱きしめられて落ち着きを取り戻した。

純は私の背中をさすりながら

「ごめん」

と言った。


純のせいじゃないのに。


「………」

「美弥が話したくなったら話して」

そう言って頭を撫でた。


もうこんな状態は嫌だよ。


自分で感情をコントロールが出来ないなんて。

きっと、次に進まなきゃいけないんだ。


辛いのは私だけじゃないんだから……


きっと、純だってこんな姿見たくないよね。

「純…手握ってて」

「うん、わかった」

私は息を吸うと、意を決して一気に話し始めた。


どうなるか分からないけど……


進むしかないから。

「…純…あのね」

今日有った事を一部始終話す。

毒を出し切るように。

もう、振り返らない。


前だけを見よう!!


私の手を握りしめたまま、怒る事も呆れる事も無く、ただ頷きながら聞いてくれた。

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