線香花火【短編】
結局、2人して3本とも失敗してしまった。

「おばちゃん、後1本だよ!!」

私は、必死になっておばちゃんに言う。

「2人のパワーを、見せなきゃいかんね」

そう言って、私達は息を整えた。

何でこんなに線香花火に真剣なんだよ!!って位、真剣な二人。

私達は、渾身の思いを込めて火を付ける。


息を殺して線香花火を見守る。



……あと少し




火が小さくなってくる。





………あと少し





わっ、成功だ!!!


「き、消えたよ」

「美弥ちゃん、願い事願い事」

「そうだ!!」


私達は、慌しく心の中で願い事をした。

真っ暗な中、おばちゃんが不意に話し始める。

「美弥ちゃん、明日帰んなさい」

「えっ……おば…ちゃん?」

あまりに急な事だから、ものすごく動揺する私。

「美弥ちゃんは、元の生活がもう出来るさ。だから、こんな所に居ちゃいかんね。帰んなさい」

「……おばちゃん…」

涙を必死に堪える。

そんな私を感じたのか、おどけた感じでおばちゃんが続ける。


「彼氏も、首をながぁ~~~くしてまっとるでさ」

そう言って、私を突っつくおばちゃん。

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