線香花火【短編】
2コール目で、電話口から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「どーした?」
聞き慣れた声に安心する。
「もしもし、ごめんね。あの……今から来れない?」
「美弥……もしかして…又か?」
すぐに私の異変に気付く。
声が低く変わり、私の胸が痛くなった。
「うん、ちょっとね」
なるべく明るい声で話してみた。
でも、体は正直だね。
ガタガタと手が震えてるの。
私、病気なのかな?
「すぐ行くから大人しく待ってろよ」
待ってる間、真っ暗な部屋の中で私はベッドの端っこで布団にくるまっていた。
1人が怖い。
今は誰かそばに居て欲しい。
ただ、温もりが欲しかった。
―――ピンポーン
チャイムが鳴る。
奴を迎えたいのに、震えが止まらなくて立ち上がれなかった。
「美弥、入るぞ!!」
真っ暗な部屋。
普通じゃないって一目で分かる。
奴は私の前に姿を現した。
「美弥?!」
奴はびっくりして、私の側に駆け寄り顔を覗き込んできた。