囁くように キミは



冬の空は、近い。
吐き出した息は白く染まり、触れた手摺りは凍るほどに冷たい。



「なーにしてんだよ、楓」

「俊也ー、やほ」

「やほ、じゃねえ。桜井も」


教室から出て来た長身の男に微笑みかければ、怒ったように私の手を掴み、教室に引き戻す。


手が冷たいと、心配そうに手を握ってくる俊也に微笑む。
後ろで美香がくすくすと笑っているのが聞こえた。



教室の中は、私立なだけあって暖房完備で暖かい。



未だに囲まれている転校生は機嫌が悪そうに見える。
ご愁傷様。
と言っても助ける気なんて更々ないけど。


堀くんを囲む女子も学校トップを争うイケメンの俊也が来たことで、ちらちらとこちらを伺っている。


やれやれ、忙しそうね。
あっちこっち見ないといけなくて。
渇いた笑みを零せば、隣の俊也が不思議そうに見てくる。



「転校生、かっこいいでしょ?」

「ん? ああ、そうだな」



そんな反応?
もっと濃い反応しようよ、俊也くん。
仮にも可愛い彼女が他の男かっこいいって言ってるんだから。

心の中で愚痴ってみる。
実際に言ったら何されるか分かったもんじゃない。
あのサド男。


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