【中編】ベストフレンド

無意識であの時座っていた場所に座っている自分に気付き、夕食後ここで酒を飲みながらみんなで盛り上がった事を思い出す。

あの日は俺の隣りに亜里沙が座っていた。

同期で俺に一方的に惚れている女がいた為、その女を遠ざける為俺の両隣には常に亜里沙と陽歌を座らせていた。

陽歌は気乗りではなかったようだったが亜里沙は「しょうがないなぁ拓巳は」と笑い、まるで姉が弟に説教するような口ぶりで「思わせぶりな事言わないでちゃんと断ってあげるのよ? 中途半端な優しさや言葉は彼女を余計に苦しめるだけなんだから」と言っていたっけ。

あれは友達としてのアドバイスだと思っていた。

だけど違う…

本当は亜里沙の気持ちだったんだ。

彼女の気持ちに気付かず、無意識に傷つけてばかりいた俺に向けられた苦しい胸の内だったんだ。


ゴメン亜里沙…


気付くのが遅くて本当にごめん


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