【中編】ベストフレンド

山崎さんは俺に色々と気づかってくれて、夕食は済ませてきたのかとか、先に風呂を浴びて少し休んではどうかとか、少しでも緊張を解くように勧めてくれる。

ペンションに着いたらすぐに再会できると思っていたのに、亜里沙の姿が無かったため、もしかして避けられているのだろうかと緊張しているのは確かだが、傍から見てもそんなにガチガチなんだろうか。

山崎さんの気遣いはありがたかったが、一刻も早く亜里沙を腕に抱きしめたかった俺は、なかなか本題に入らない山崎さんに痺れを切らして、ついに自分から話を切り出すことにした。

「俺の事は結構です。
それより亜里沙に会わせて下さい。
彼女はここにいるんでしょう?」

俺の質問に山崎さんは一瞬瞳を曇らせた。嫌な予感が胸を過ぎる。


「亜里沙さんは今、ここにはいないんだ」


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