【中編】ベストフレンド
すぐにでも亜里沙に会えると思っていた俺は、その言葉に目の前が暗転したような気分になった。
同時に胸を押しつぶされそうな不安が俺を襲う。
「…いないって何処へ行ったんです?」
俺は明らかに動揺していたと思う。
今までの俺なら相手が誰であろうと絶対に人前でこんなに動揺した姿を見せることなど無かったし、自分の弱みを曝すなんて死んでもするもんかと思っただろう。
相手が初対面の山崎さんなら尚更の事だ。
だけど、それを恥ずかしいとかイヤだとかそんなこと考える余裕さえなかった。
山崎さんはそんな俺に落ち着くようにと手で制すると、タバコを取り出して一本くわえ火をつけた。
それを見て俺もポケットからタバコを取り出す。
タバコを持つ手が僅かに震えているのがわかる。
緊張の為か、動揺しての事か…どちらにしても本当に俺らしくない。
こんな姿、亜里沙が見たらどう思うだろう。
ここ一ヶ月、タバコの本数が増えている。
亜里沙、おまえが早く見つからないと俺は肺ガンになって死んじまうぞ。
心の中で恨み言を言いつつ山崎さんの言葉を待つ。
溜息を吐く様に紫煙を吐き出してから山崎さんは重い口を開いた。