【中編】ベストフレンド
「彼女は昨日から入院している」
その言葉が耳に入ってから意味を理解して飲み込むまで、どのくらいに時間がかかったんだろう。
少なくともすぐには反応できないほど、大きな衝撃を受けた。
「…入院? 亜里沙は何処か悪いんですか?」
身体が震えて声も上擦っている。
今度は緊張の為なんかじゃない。明らかに動揺の為だ。
亜里沙が入院?
一体何があったんだ?
「昨日の朝、倒れたんだ。
ここへきて一ヶ月彼女は良く働いてくれた。
でも僕たちはとても心配だったんだよ。
彼女は食が細くて殆ど食べない。
見ていても痛々しいくらいに痩せていくのがわかった。
何かを深く悩んでいるようだったよ。
僕達夫婦も心配で何度も理由を訊いたんだ。
そして先日ようやく妻が、彼女は辛い恋をしていてその恋を忘れる為にその人から逃げてきたらしいと聞き出したんだ。
随分思いつめている様子だったし、一度戻ってきちんと話すように説得しようと思った矢先、彼女は倒れたんだ」