【中編】ベストフレンド
ペンションでじっと朝まで待つなんて、とても無理だった。
山崎さんを説得すると、直ぐにタクシーを呼んで病院へ向かった。
病院の向かいの路地から、教えてもらった病室の位置をじっと見つめる。
病室を見ているだけでも、このひと月極限まで高ぶっていた感情が、嘘のように凪いで穏やかになるのを感じていた。
ここに亜里沙がいる。
それだけで嬉しかった。
カーテン越しにベッドサイドの明かりが漏れている。
亜里沙はまだ起きているようだ。
何を考えているんだろう。
俺の子どもを…彼女は産んでくれるだろうか。
亜里沙に会ったら、まず最初に何を言おう。
俺の気持ち、子供の事、話すことは沢山ある。
不安や期待の入り混じった感情が、グルグルと頭の中で廻っていた。