【中編】ベストフレンド
伸ばしかけた手をグッと握り締めると、想いを振り切るように走り出した。
だけど走り出した途端おなかの奥に響く鈍い痛み。
このまま走り続けたら、この子は死んでしまう。
「やめろ亜里沙。走るな」
夜の静寂を破るような拓巳の声に、ハッとする。
迷いが私の足を緩めたのとほぼ同時に、腕を強く掴まれ引き寄せられる感覚があった。
―― 行くな!
呆然としている私の耳に届いたのは切ない声。
とてもとても愛しい人の声。
拓巳…
あなたを忘れる事の出来ない私を…
どうかそっとしておいて…。