【中編】ベストフレンド
「赤ちゃん、男の子だったのね。
名前は決まったの?」
陽歌の言葉に俺達は同時に互いの顔を見た。
どちらが話すか目で会話をした後、亜里沙がコクリと頷いて口を開いた。
「うん、あのね、私たちがこうして幸せになれたのは、陽歌や山崎夫妻やたくさんの人に支えてもらったからだと思っているの。だからね…」
亜里沙がふんわりと幸せそうに微笑んだ。
その場がひと際明るくなった気がしたのは俺だけじゃないと思う。
陽歌が眩しいものを見るように亜里沙を見て微笑んだのを、俺は確かに見たのだから…。
「陽歌の名前から一字貰う事にしたの」
「ええっ!」
「陽歌の陽と山崎さんの一臣から一字貰って『陽臣』(はるおみ)って名付けたのよ」
「へぇ…陽臣くんか。いい名前じゃない。
なんだか照れちゃうけどね」
「俺としては陽歌みたいになったら困るからやめとけっていったんだけどな。
亜里沙がどうしてもって言うからさ」
俺の言葉に「何ですって?」と言い返してくる陽歌。
おまえ妊婦だろ?胎教ってのをもっと考えろよ。
「まあまあ、悪気は無いって。
ところで陽歌はもう名前決めているのか?」
「うん、もう女の子だってわかっているから…『朱音』(あかね)って決めているの。朱の音って書くのよ」