【中編】ベストフレンド
彼女の後ろには窓越しの満開の桜が風に煽られて、陽歌を桜色に染めている。
まるで桜の花びらに陽歌が包み込まれて護られているように見えたのは俺の錯覚だったのかもしれない。
だが…その光景に強く深い意志を感じずにはいられなかった.
陽歌は茜さんに護られている。
いや、陽歌だけじゃない。
彼女の周囲の人間全てが幸せになるようにと、祈りで包み込み守護されているように感じるのは決して思い過ごしでは無いのだと思う。
陽歌の中でずっと眠り続けていた茜さんの深い愛情は、陽歌に関わったすべての人にも降り注がれていたのかもしれない。
陽歌の夢に深く興味を持っていた亜里沙があの丘を見つけたことも…
それによって陽歌が晃さんと結婚した事も…
陽歌の結婚式の夜、俺達が結ばれて子どもを授かった事も…
亜里沙を追いかけて【Friend】へ行った夜に感じたあの胸騒ぎも…
全ては皆の幸せを願う彼女の想いが、運命へと導いてくれたのかもしれない。