【中編】ベストフレンド
「朱音かぁ…『梶 朱音』って言うのもなかなか良いかもしれないぞ。」
俺が小さく呟くと、陽歌が敏感に反応した。
「バカな事言わないで。
拓巳の息子なんかに絶対に嫁にはやらないから。
大体晃さんの溺愛ぶりったら大変なのよ。
毎日お腹に話しかけて、生まれる前からべったりなんだから。
転んだらどうするとか、誰かにぶつかって何かあったらどうするとか、本当に心配性なんだから。
今日だって診療所を閉めて一緒に来そうな雰囲気だったのよ」
「うわ…。マジかよ?
そんなんで生まれたらどうなるんだよ」
「今から考えるもの怖いから…考えないようにしているの」
「そっかぁ…。
『梶 朱音』は無理かな」
「まだ言ってる。
何だったらお婿に貰ってあげるわよ。
『高端 陽臣』ってどう?
こっちのほうが良いんじゃないの?」
俺と陽歌の会話を呆れて聞いていた亜里沙がたまりかねたように笑い出した。
「どっちでもいいわよ。
この子達が幸せになってさえくれればね。
だいたい朱音ちゃんが陽臣を好きになるかなんて解らないのに、親が勝手に暴走してどうするの?」
亜里沙の言葉にもっともだと納得して三人で一斉に笑った。