【中編】ベストフレンド
食事はとても美味しかった。
拓巳が選んだワインも凄く飲みやすくて、普段ワインを飲まない私でも十分に楽しめた。
でも、私には拓巳の考えている事がわからない。一体どうしたって言うんだろう。
以前に、私に彼ができたと拓巳が勝手に勘違いした時でさえ、「奢ってくれたら話す」と言った私を連れて行ってくれたのはいつもの居酒屋だったのに。
食事を終えた私たちはいつも行くショットバーに自然と足を向けた。
拓巳は相変わらずいつもと変わりない笑顔で話しかけてくる。
だけど、話が陽歌の結婚のことになった時、私は胸が痛くてたまらなかった。
拓巳はどうしてそんな優しい笑顔で陽歌の事を話せるの?
『俺はこれでやっとみんなが幸せになれると思っているんだ』
式からの帰り道に拓巳はそう言ったけれど、『それは違う!』と、あの時言えずに飲み込んだ台詞が、再び感情と共に迫り上がってきた。