【中編】ベストフレンド

「どうして…今日私を誘ったの?」

「どうしてって…陽歌を肴に飲もうって言ったじゃないか」

「…でも、いつもだったら居酒屋とかでしょう?
今日に限ってあんな素敵なレストランで、エスコートまでしてくれて…
まるで恋人同士のデートだわ」

「今日は特別だよ。
陽歌を失って初めて気付いたんだ。
今まで亜里沙にどれだけ支えられていたか。
それなのに俺はお前の事解っていない部分も多かったよな。
彼氏の事もそうだしさ。
…親友なのに俺ばかりお前に頼っているなって思ったら、何かお礼がしたかったんだよ。
これまでの感謝を込めてな」

拓巳は私から視線を外すとカウンターの向うのバーテンダーにカクテルを頼んだ。

カクテルが出来上がるのを見つめながら、拓巳はただ黙って氷が砕け小気味いい音を立てているシェイカーの音を聞いている。

自分の前に出されたカクテルグラスを取り上げると、拓巳はそれを私に向かって掲げ、微笑んだ。

胸が鷲掴みにされたように痛くなる。

差し出されるグラスに自分のグラスを合わせると、透明な音が響いた。

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