【中編】ベストフレンド
3.一人の朝 Side拓巳
カーテンの隙間から差し込む朝日に目を細める。
いつもとなんら変わりない自分の部屋。
だけど何かが違う気がした。
そこまで考えてハッとする。
押しつぶされそうな心を優しく抱きとめてくれた筈の腕がない。
抱きかかえるようにしてぬくもりを感じていた存在がいない。
――亜里沙
慌てて体を起こして部屋を見るが亜里沙の姿は何処にもない。
シャワーを浴びている気配があるわけでもなく、まるで昨夜の肌の温もりが夢だったと錯覚する程、いつもどおりの俺の部屋は当たり前過ぎるほど静かだった。