【中編】ベストフレンド

拓巳が添乗を控えて忙しいのは解っている。

私に声をかけることが出来るのは、昼休みか仕事が終わる時間を見計らっての事だと思う。

その時間を上手く避ければ、明日に迫った出発までに終えなければいけない仕事を抱えている拓巳には、私に構っている時間など無い筈だ。

昼休みは早めに事務所を出て、拓巳とすれ違いになるようにタイミングを計った。

夕方も帰宅したと見せかけるため、カバンを持って事務所を出てからコッソリ戻って残業をした。

どんな理由があっても、陽歌から引き継いだ今度の拓巳が担当するツアーの仕事だけは、人には触れて欲しくなかったから。

多分これが拓巳の為にしてあげられる最後の仕事だから。



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