【中編】ベストフレンド
「そうよ。亜里沙は私と拓巳が一緒になることを望んでいた。
ううん、拓巳が幸せになる事を望んでいたの」
「俺…?」
「私がまだ晃先生に出会う前、何度もあの丘の風景を夢に見ていたのを拓巳も知っているでしょう?
亜里沙はそれを私の潜在意識によるものだと思っていたの。
早い話が幼い頃に両親を無くした心の傷が、何かの形でその頃関わった男性や風景を夢に見せていると考えていたのよ」
陽歌の説明にかつての亜里沙の言葉を思い出し納得する。
「でも実際は違っていた。
それは拓巳も良く知っているわよね。
あれは私の中に眠る茜さんの記憶だった」
「ああ、そうだな」
「私が晃先生と出逢うのは避けられない運命だったわ。
でも、亜里沙があの丘を探したのは別の理由だったの」
「お前の為だろう?
何年も毎晩のように夢を見るお前の心の傷を治したかったんじゃないのか?」