【中編】ベストフレンド
「ある意味そうかもしれない。夢を幻想だと気付いて、私が拓巳に目を向けることを望んでいたのよ。
…亜里沙があの丘を見つけたとき、亜里沙は晃先生に出会っているのよ」
「例の彼氏が急患で運ばれたって、あれだろ?
でもあれって嘘だったんじゃ…」
「あの日、具合が悪くなって診療所に来たのは亜里沙の彼なんかじゃなくて亜里沙本人だったのよ。
もちろん亜里沙には連れなんていなかった事を晃さんは覚えていたわ。
亜里沙ったら、多分ずっと独りで…」
「ずっと独りであの丘を探していたのか。
…あの場所も偶然見つけたわけじゃなかったって事か?」
「解らないけど…私は何かに導かれたと思っているわ」
陽歌の中に眠る茜さんの意志が、いつも傍にいる亜里沙に影響を与えていたとしてもおかしくないかもしれない。
亜里沙はいつも陽歌の夢の話を聞いていたし、誰よりも夢に理解と興味を示していた筈だ。
茜さんの晃さんと家族への一途な想いが多くのものを動かしたことを、実際に目の当たりにした俺には陽歌の言いたい事が良く解った。