【中編】ベストフレンド
「亜里沙には、私が晃さんを諦める切っ掛けさえあれば良かったんだと思う。
だからあの場所が見つかって私があの丘へ向かった時に拓巳にそのことを教えたのよ」
陽歌が初めて晃さんに会いに行ったときの事を思い出す。
あの丘が見つかって陽歌がそこへ向かったと聞いたとき、追いかける事を俺は迷ったんだ。
夢に良く似た場所が見つかったくらいで何も変わるはずが無いと高を括っていた俺は、いくら惚れているからといっても、女を追いかけて仕事をすっぽかすなんてみっともない事は出来ないと思っていたからだ。
だが、今行かなければ一生後悔するかもしれないと俺を叱咤し、どうしても追いかけろと無理矢理俺の背中を押したのは亜里沙だった。
あの時亜里沙がそうしてくれなかったら、俺は後悔して陽歌への気持ちを吹っ切る事も出来ずにいたかもしれない。