狼少年

新しいクラスの話とか、今月のファッション雑誌の話とか。そんな他愛もないことを喋って、私と佑香は電車に乗って、別れた。

私のほうが佑香よりも家が遠くて、学校に行くまで1時間と少し掛かる。

イヤホンを耳に突っ込んで、入り口付近でぼーっと外の景色を眺めていた。
滑らかに流れる景色が、だんだん緩やかになっていく。もう次の駅に着くようだ。

私が立っているほうの扉が開くのを、この1年で覚えた私は、座席の方に寄って道を開ける。降りる客はまばらだが、乗ってくる客が多い。次の駅が確か方面の違う電車が連絡するんだっけ。

ある程度人が降りると、どっと学生が乗り込んできた。

うーわ、サイアク…。

私は無意識に顔をしかめて、俯いた。運動部と思われる男子学生の集団が乗り込んできて、私の立ち位置を圧迫する。

電車が走り出すと同時に、その集団も揺れて、更にそのうちの一人がバランスを崩して私にぶつかってきた。

「す、すみません」

「いえ…。」

とりあえず離れてくれ なんていうことも出来ず、私は吐き気を堪えながらなんとか返事する。

あと3駅、我慢すれば。
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