狼少年
始まりの4月

1.

「あやこ、ご苦労さん。」

担任のはっしーからお礼を言われる。出席確認ついでに。去年からの腐れ縁と、出席番号順での運悪い席順(真ん中の列の一番前)という最悪な理由で生活委員に任命されたのは昨日のことだった。

「はっしー、お礼言うなら席替えしてよ。」

ブーイングを言う。隣の席の修司もそうだそうだと便乗する。コイツも去年から同じクラス。昨日私とじゃんけんして、生活委員から逃れやがった。

「そうそう。係りも決まったし、席替えしようと思ってたんだよ。校外学習も席替え後の席で適当に班分けしてやろう。」

朝のホームルームを適当に、だるそうに済ませるはっしー、基橋本規子。40歳旦那と子2人持ち。口も悪いし第一印象もいい意味で恐かったのを覚えている。新しいクラスでこんな風にはっしーと口を利いているのは、だいたい元3クラスの人だ。

「あやこお前生活委員だろ。くじ作って放課後にでも席替えしとけばいいよ。」

「え、超適当だね。っていうか庶務にやらせなよ。」

「担任の言うことは聞いとけよ。じゃ、ホームルーム終わり。1時間目移動だから遅れんなよー」

はっしーは面倒臭いことを私に押し付けてさっさと出て行った。
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