狼少年
「……また訳のわかんないことを……。」

頭痛がする。こいつと喋ってたら。呆れてそれしか言えない私に、桂はふっと笑う。

私は気付かなかった。

周りの変化にも、


―――…自分の変化にも。

「麻由、さっさと焼いちゃお?」

「え?あー…、うん。そだね」

今まで元気に喋っていた麻由が、急に大人しくなったのが気になって、

「…どうしたの?」

「いや、いい。後でゆっくり話すわよ、あやこ。」

何故か断られ、しかも尋問の約束まで取り付けられた。

「あやこ、そこのサツマイモ取って」

「自分の箸届くじゃんっ」

「だって網の上熱いし。」

「なんで私が……。」

ぶつぶつ言いながらも頼まれた通りにサツマイモを取り分ける自分に自嘲。

私はまだ気付かない。

麻由や他のクラスメートの視線が、控えめではあるが自分に集中している、ことに。
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