狼少年
30分くらいで食材を食べ切って、かたずけることになった。

「借り物なんだから借りたより綺麗にしてから返すんだよ。」

はっしーは鬼だと思う。周りの男子が必死で網を洗ってる姿を見てそう思った。私の班のは修司が洗ってくれる(というより麻由が押し付けた)らしい。私は細々としたゴミを拾ったり纏めたりしながら、……桂のほうは極力見ないように、近づかないようにした。

麻由が黙々と空き缶を拾う姿が視界に映る。今時の子だけど、こういうところはちゃんとしてて、凄いなって思う。

「ねえ、さっきのどういうこと?」

不意に近くに居た女の子の声が耳に入った。顔をあげると、やっぱり私のほうを向いていて。

「さっきの、って、」

「桂君、さりげなく告白してたじゃん!」

他人事なのに真剣になってるこの子…小織ちゃんは、私の言葉を待ってるっぽい。

「からかわれてるんだよ。」

「そぉなの?な〜んだ…。」

最後の言い回しが何だかホッとした、みたいな。

ゴミを集めてたスーパーの袋口をギュッと縛りながら、小織ちゃんを見詰めた。

「あやこだけに教えてあげるね」


内緒だよ、なんて言いながら小織ちゃんは声を小さくした。
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