燃える煙突。
「そうだね。旅行に行こっか。」


「本当!?楽しみだな~。」

子供みたいに笑うマサが可愛くて、愛しかった。



「でも、飛行機は嫌よ。」


「え…?何で??」


「だって、飛行機って飛ぶ魚じゃない。そんなの怖くて乗れないわよ。」


「飛ぶ魚って何だよ。それを言うなら、“鳥”だろ~?」

そう言って、ケラケラと笑う。


「違うわよ。鳥は元々飛べるじゃない。だから飛ぶ鳥って表現はおかしいのよ。やっぱり飛ぶ魚が正しいわ。」



「う~ん?そうかぁ~…?」


マサは首を捻らせた。


「やっぱり飛ぶ魚っておかしいよ。どう考えたって飛行機は魚に見えないじゃないか。」


「見えるわよ。だってそう教えてもらったもの。」


「えぇ~?誰が、そんな事言ってたんだ?」


「……忘れちゃったわ。」


「何だよ、それ~。」



「ごめん…遠い昔の事だから…。」



「…そっか。」



本当は、誰が教えてくれたのか覚えている。


だって、それは大切な思い出の一部だから。


そう、教えてくれたのは、紛れもない、私の母だった。

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