燃える煙突。
地下鉄の駅を出ると、薄暗くなった空から雨が一滴落ち、地面をポツリポツリと濡らす。


誰かの涙みたいに降っていた雨は、あっという間にどしゃ降りに変わった。



傘を持っていない私は、慌ててタクシーを拾い、滑るように乗り込んだ。


「警察署までお願いします。」


「もしかして、お姉さん、警察の方かい?」


タクシーの運転手は、ミラー越しに私を見た。


「…あ、はい。」


警察の人間だと知ると、大抵の人はギクリとする。


何も悪い事をしていなくても、罰が悪そうな顔をするものだ。


そして、それ以上関わらないように、壁を作るのだ。



「ほ~そうなのかぁ。おじちゃんは安全モットーの人間だから切符は切らんでくれよ。」


おじさんは陽気に笑った。

「まだ出勤前なので、大丈夫ですよ。なので、捕まらないくらいのスピードで飛ばしちゃって下さい。」


私も負けじと陽気に答えた。


「話の分かるお姉さんだ。」


おじさんは、笑いながら少しスピードを上げた。
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