燃える煙突。
警察署に着き、支払いを済ませ、タクシーを出ようとすると、おじさんに呼び止められた。


「ホラ、これを飲みなさい。」

おじさんは、私に何か差し出した。


「…え?」


「これを飲んで元気を出しなさい。」


ホラ、と私に差し出す。


それを受けとると栄養ドリンクだった。


「ありがとうございます。」


「世の中は、辛い事ばかりじゃない。良い事も沢山あるものだ。」


おじさんは意味あり気な言葉を残し、街中へと消えて行った。



消え行くタクシーを見つめながら、一瞬何かの残像が横切った気がした。


「やっぱり疲れてるのかな…?」


余りにも五月蝿い騒音をかき消すように頭を降った。

受け取ったおじさんの優しさをギュッと抱きしめ、一気に飲み干した。


体中がみなぎるような錯覚を覚え、意を決してそびえる警察署を見上げた。
< 6 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop