ナイツ。
「今日は、一緒に帰れないんだけど、いいかな」
終業のベルが鳴ったあと。
顔を真っ赤にして、まひるが言った。
「ん……いいけど」
どうして、と理由を聞こうとしたが、その必要はなかった。
「坂下」
まひるの名字を呼んだのは、低いトーンの声だった。
それは、思わず聞きほれてしまう、すてきな音だった。
「伊勢くん」
まひるは、その声の主をそう呼んだ。
頬を真っ赤に染めながら。
「あの……言いそびれたんだけど。昨日から、付き合うことになったんだ」
まひるは、はにかみながらも、うれしそうに言った。
その笑顔は、まぶしくて、あたしはとてもじゃないけど直視できなかった。
あたしの目は、キレイなものを見るには、暗闇に慣れすぎていた。
「そう」
あたしは思わず、そっけなく言ってしまう。
「あ、あの、怒ってる?」
まひるは、あたしの態度を、怒りを勘違いして、あわてふためく。
あたしは、まひるの誤解をとこうと、エガオを作る。
「まさか」
あたしのエガオを見たまひるは、ほっとしたようだった。
……エガオに騙されるのは、オトコだけじゃないんだ。
オトコに向けるのと同じエガオをまひるに向けてしまった。
あたしの胸はチクリとした罪悪感がささる。
「それじゃ、仲良くね」
あたしはそう言うと、教室をあとにした。
あたしは、少しだけ夕日ぶった空を眺める。
最近は本当に日が落ちるのが早い。
夜の長さに、息が詰まる。
だけど。
夜。ナイト。
あたしにピッタリの暗闇。
その深さに飲み込まれて、あたしはどんどん黒くなっていくんだ――。
ピピピピピ……。
夜への漠然とした恐怖に吸い込まれそうなところを、ケイタイの着信が引き止めてくれた。
ディスプレイに表示された名前は「カホ」。
あたしは、少し身構えた。
――夜の。
「ナイツ」からの、召集だ――。
終業のベルが鳴ったあと。
顔を真っ赤にして、まひるが言った。
「ん……いいけど」
どうして、と理由を聞こうとしたが、その必要はなかった。
「坂下」
まひるの名字を呼んだのは、低いトーンの声だった。
それは、思わず聞きほれてしまう、すてきな音だった。
「伊勢くん」
まひるは、その声の主をそう呼んだ。
頬を真っ赤に染めながら。
「あの……言いそびれたんだけど。昨日から、付き合うことになったんだ」
まひるは、はにかみながらも、うれしそうに言った。
その笑顔は、まぶしくて、あたしはとてもじゃないけど直視できなかった。
あたしの目は、キレイなものを見るには、暗闇に慣れすぎていた。
「そう」
あたしは思わず、そっけなく言ってしまう。
「あ、あの、怒ってる?」
まひるは、あたしの態度を、怒りを勘違いして、あわてふためく。
あたしは、まひるの誤解をとこうと、エガオを作る。
「まさか」
あたしのエガオを見たまひるは、ほっとしたようだった。
……エガオに騙されるのは、オトコだけじゃないんだ。
オトコに向けるのと同じエガオをまひるに向けてしまった。
あたしの胸はチクリとした罪悪感がささる。
「それじゃ、仲良くね」
あたしはそう言うと、教室をあとにした。
あたしは、少しだけ夕日ぶった空を眺める。
最近は本当に日が落ちるのが早い。
夜の長さに、息が詰まる。
だけど。
夜。ナイト。
あたしにピッタリの暗闇。
その深さに飲み込まれて、あたしはどんどん黒くなっていくんだ――。
ピピピピピ……。
夜への漠然とした恐怖に吸い込まれそうなところを、ケイタイの着信が引き止めてくれた。
ディスプレイに表示された名前は「カホ」。
あたしは、少し身構えた。
――夜の。
「ナイツ」からの、召集だ――。