ファインダーの向こう側
「俺、あざみに傍にいてほしいんだけどな」
独り言のように、とーやがさらっと言った科白は、あたしは聞こえなかったふりをした。
「ねぇ、あざみ。俺、あざみと一緒に飛行機乗りたいし、北海道に上陸したいし、あざみと一緒に笑ったり驚いたりしたいよ。
ねぇ。ダメなの?」
横顔にとーやの視線を感じて、あたしは振り切るように、身体を反転させた。
あ―ぁ。綺麗な空だったのにな。
空から眼を離さなきゃならないことが、少しだけ残念。