ファインダーの向こう側

「俺、あざみに傍にいてほしいんだけどな」


独り言のように、とーやがさらっと言った科白は、あたしは聞こえなかったふりをした。


「ねぇ、あざみ。俺、あざみと一緒に飛行機乗りたいし、北海道に上陸したいし、あざみと一緒に笑ったり驚いたりしたいよ。

ねぇ。ダメなの?」


横顔にとーやの視線を感じて、あたしは振り切るように、身体を反転させた。

あ―ぁ。綺麗な空だったのにな。
空から眼を離さなきゃならないことが、少しだけ残念。
< 12 / 39 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop