ファインダーの向こう側


迷わずあたしの隣に来たとーやはいつもと違って、大きなスポーツバックを持っていた。


どこから走ってきたのか、ほっぺを真っ赤にしていて、それが可愛いなと思う。


「ただいま、あざみ」




「――――おかえり」


にこ、と笑うとーやにつられて、あたしも少し笑う。実際に笑えてたかは分からないけど。もしかしたら不細工に顔がひきつっていただけかもしれない。

それでも久しぶりに発した「おかえり」は照れ臭くて、でも温かい気がした。

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