ファインダーの向こう側
そんなきみちゃんがあたしにポラロイドカメラをくれたのは、5年前の話だ。

中学校の入学式の前の日に、ふらりとあたしの家を訪れたきみちゃんがくれたんだ。


「あざみは俺に似てるから」


そう言って、あたしの頭を撫でたきみちゃんの顔が、なんだか悲しそうで、切なそうで、あたしは無性に悔しくなった。


だから生身のまま貰ったポラロイドカメラのポラロイドSX-70はすごくかわいくて、嬉しかったけれど、あたしは精一杯の悪態をついた。

そんなあたしをママはかわいくないって顔をして見てたけど、あいかわらずきみちゃんはおおらかに笑っただけだった。

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