ファインダーの向こう側
「なぁ、あざみ。

お前の見る世界は汚いかもしれないけど、そいつを通してみる世界はすごく綺麗だよ。気がむいたら覗いて見たらいいよ」


そう言い残して帰っていったきみちゃんの背中に、あたしはまた悪態をついたけど、それはただの強がりに過ぎなくて。

本当はもっと、きみちゃんにこの家にいてほしかった。あたしの居場所がない、寒々しいこの家にいてほしかったのに、きみちゃんはいつも冬の気まぐれな日差しのように、ピュッとやってきては、すぐにすっと帰ってしまう。


ふてくされたあたしは、ポラロイドSX-70を封印してやろうと決めたけれど、結局一ヶ月と持たずして、きみちゃんの誘惑に負けて、そのファインダーを覗いてしまった。
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