傷を分け合って
私はその日から、ユーキのバンドのライブがあれば毎回行くようになった。

毎度同じ

ユーキの目の前

私の場所。


会う度に、ユーキを好きな自分が構成されていく・・・。





『腹減ったぁ。』

自分達の出番が終わるなり、ユーキはそう言いがら私の横に腰をかけた。

『お疲れ。』

ユーキに用意してたお茶を渡した。

『サンキュ。お前、夜飯食った?』

『まだだよ?』

『よし、ラーメンでも食いに行くかぁー』

『ユーキの奢りでね(笑)』

『おぅ。』


ユーキに初めてご飯に誘われた私は、憎たらしい笑みを浮かべる顔とは裏腹に、心は高揚していた。


チャリンと音を立て、ズボンのポケットから車の鍵を出し、指でくるくる回しながら歩きだした。

『車持ってくるから、ここで待ってな。』

『ぅん。』


少しして、白いスポーツカーが入口前に停まった。


初めての“二人っきり”に私は少し戸惑っていた。


『ユーキ、こんな車乗ってんだ。』

『俺がこんな車乗ってたら悪いのか?』

『意外だなーって思っただけだよっ。』

『似合わない?』

『うん。』



・・・嘘。



本当はカッコイイって思ったの。

運転する姿、スゴク好き・・・。


赤く染まる顔を隠してくれた夜に少し感謝した。
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