傷を分け合って
『私の家、あっちなんだけど。』
タツミは何も言わないまま車のスピードを上げた。
『ちょっと!私用事あるんだけど!』
タツミが一瞬ニヤッと笑った。
気のせいなんかじゃなかったんだ!!
…何かされる!
咄嗟にそう判断した私は『降ろして!!』と叫んだ。
その瞬間電話が鳴った。
相手はユーキだった。
『ユーキ!!助けて!!』
泣きながら電話をとると携帯はタツミにむしり取られた。
『ちょっとっ!!返してよ!!』
私は運転中のタツミから携帯を取ろうと必死で手を伸ばした。
通話になったまま、携帯は後部座席に放り投げられた。
『もしもし!?里奈っ!?どうした!?今ドコにいるの!?』
届かない電話の向こうから、ユーキの声が聞こえる。
『ユーキ!!ユーキぃぃぃ!!』
車は突然闇の中で停まった。
私はその瞬間運よくこっちに滑ってきた携帯を手に取り、車から飛び出し、携帯を耳に当てた。
『ユーキ!!』
『今どこにいんの!?何があった!?』
かすかに波の音が聞こえる。
『ぅ、海!海!』
パニックになった私はそれしか言う事が出来ず、必死で逃げた。