傷を分け合って
アキナは毛布で私を包んで抱きしめてくれていた・・・。
『里奈…怖かったね。でも、もう大丈夫だからね』
泣きながら、ゆっくり背中をさすって落ち着かせようとしてくれた。
通り掛かった車のライトで一瞬ユーキが見えた。
今まで優しかったユーキからは想像もつかない恐い顔で誰かを殴っている。
掴んだ手の先には、血だらけになったタツミらしき人物。
私はただ、傍観しているしか出来なかった。
止めようにも、全身の震えが止まらなくて立ち上がることすら出来ない。
しばらくして、一つの足音がこっちに向かって歩いてくる。
『…行くぞ。』
毛布に包まれたまま、私は宙に浮いた。
ユーキに抱き上げられた瞬間、何かが切れたように、私の目から涙が溢れた。
アキナはユーキから私の鞄を受け取り、砂に埋もれていた携帯を拾うと、車に乗り込み、私の肩を抱えてずっと一緒に泣いていた。