傷を分け合って



泣く事すら出来ない。


今自分が

眠っているのか、起きているのかすらわからない。


ただ・・・



時折思い出すのは



ユーキの声と
温かい胸と
頭を撫でる大きな掌








愛せない。

新しい命・・・。

消えて欲しい。



朝、目が覚めたら

お腹が萎んでて欲しい。





気が付けば

握り締めていたナイフで

お腹を刺していた



『…っ!!』




“痛い”

より

“苦しい”




脚をつたって流れる血液。

二つの命の幕が

私によって

強制的に閉じようとしている。









ただ、最後に・・・




ユーキの声が聞きたい。




朦朧とする意識の中

私はどうやって手にしたのかわからない携帯電話のボタンを押した。





なんとなくユーキの声がしたのがわかった。


何も言わなくても、ユーキは私の異変に気が付いたみたいだった。



『里奈!?どうした!?』









ねぇ、ユーキ。



私はまたこうやって



あなたを苦しめてしまう。


ごめん・・・。


ごめんね・・・?
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