傷を分け合って
気が付くと最前列まで人を掻き分けて来ていた。


この場所は・・・



特等席だ・・・



手を伸ばせば触れられそうな程近く。

あなたの目の前。



不思議だね。

なぜ、今まで気づかなかったんだろう・・・


バンドの名前も知ってた
ライブだって
きっと何回も見てるのに。

金色の髪

鋭い目つきに黒い瞳

慣れた手つきで奏でられる

あなたのメロディー








『里奈ぁ〜!やっと見付けたよぉ。』


アキナの声で、私は現実に引き戻された。


『アキナ!』

私達の方にナオヤ君が近付いて来た。

その後には

先程のギタリストがナオヤと共に歩いて来た。

『里奈ちゃ〜ん!来てくれたんだね〜!』

アキナの横にいる私に気付いてナオヤは私に声をかけた。


『なんか今日、いつもと雰囲気違くない?』

『そうかなー?新しい服買ったから着てみたんだけど♪』

そんな他愛もない話をしている最中、真後ろから低い声が聞こえた。

『里奈ってゆーんだ?』




先程のギタリストが私に声をかけてきた。
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