傷を分け合って
私の目の前に、再び現れるやいなや、いきなり大声で笑い出して


『お前さぁ、近すぎ!』


なんて言い出した。


私は今まで誰にも見せた事ないような素っ頓狂な顔をしていただろう。

だって、誰が想像するだろうか。

初めて会った人間に
いきなりお前呼ばわりで
ゲラゲラ笑いながら話し掛けてくるなんて。


あまりの驚きに、私はその男に何も言えないまま、ただ目を丸く見開いていた。

『どんだけ近くで見たいんだよ!笑』

あまりにゲラゲラ笑うので、いい加減イラッとしてきた。

『自惚れてんなよ。バーカ!』

そのまま吐き捨ててその場を去ろうとした。


『ごめんごめん!そんな怒んなって。』

全く反省色のない先程のギタリスト。

さっき、私が感じた高揚は何かの間違いだったんだろうか。

『いきなりそんな事言われて怒らない人なんていません!』

『ごめん。もう笑わないから!』

と、言いながらまだ笑っている。本気で悪いと思ってるんだろうか?

『俺ユーキ。よろしく!』

ニッコリ笑って手を差し出してくるので、思わず私も握手を受けてしまう・・・。

『ま、いーや。よろしく!』


その笑顔に、私は胸の高鳴りが止まらなかった。
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