Special X’mas
車に乗り込むと、恭牙の香水の香りがいっぱいに溢れていた。
ふと、車についているケースを広げる。
そこには、小さなピンク色のクマのキーホルダーがあった。
これは、付き合い始めた頃私がわざと置いていった物。
最初はこの車の黒に馴染んでいなかったピンクのクマさんも今じゃ自分の家のように馴染みきっている。
これがここにあるだけで、私と恭牙は一緒にいるんだって実感出来たりするんだ。
恭牙の骨ばった大きな手が、CDを入れたり出したり……。
そして、車の中には恭牙が大好きなバンドの曲が流れ始めた。
いつも聞いている、着メロの曲。
恭牙がしょっちゅう聞いたり歌ったりするものだから、体がリズムを覚えてしまっていた。
隣で運転をする恭牙は、小さく歌いながらご機嫌な様子……。
「ねぇ恭牙?」
「んー?」
「どこ行くの…?」
「ひみつ」
運転をしているからこちらを向かないものの、恭牙の横顔は楽しそうに笑っていた。