君の紅が好き
艶は御膳の準備が終わってから約束どおり華代のもとへ向かった。

華代の部屋へ入った途端。

艶の背中が凍りついた。

華代は結っていた髪を解き、

黒い布地に美しい椿の刺繍がほどこされた着物を着て、

部屋の真ん中で正座をし、艶のほうをじっと見ていた。

見ていたというよりも、睨んでいるに近い眼力で。

『そちらに座ってください。』

艶は華代に促されるように座った。

『単刀直入に聞かせていただきます。
どうして門外不出の家光様の容態を知っていたのですか。』


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