雨宿り
最近なぜか苛々していた。
小次郎は嫌いじゃなかったけど、自慢話は聞きたくなかった。
「おーい、ちょっと待てよ」
小次郎の声が聞こえた。
聞こえないふりをして、そのまま行こうかとも思ったけど、立ち止まって、振り向いた。
小次郎は小走りに後を追いかけてきて、ようやくわたしに追いついた。
大きく肩で息をしている。
「なあに」
「ああっ、ちょっとなっ。どうだっ、わしのウチまで来ないか」
小次郎は時々突飛なことを言う。
「だめよ。まだ、こんなに残ってる」
鞄の中の未配達の手紙を見せながら、やんわり断ったが、小次郎はそんなことなどいっこう気にしない。
「仕事に疲れた時には休むことも大切さ。配達なんか明日に回しゃあいい。さ、行こう。一日ぐらい配達が遅れたって、誰にもわかりゃしないって」
(一日ぐらい遅れても、誰にもわかりゃしない?)