雨宿り
そういえば、小次郎の家に入るなんて初めてのことだった。
奥を覗くと、玄関に続く台所の先にガラス戸で仕切られた畳の間がひとつ。
薄暗いのは天気のせいばかりじゃなく、きっと小さな窓しかないため。
雨音が激しく響き、一向に止む気配はない。
玄関から雲の動きを探ろうと身をのりだすと、土砂降りの中をトボトボと歩く猫の姿が目に入った。
(小次郎?)
最悪。
立ち去ろうにも、もはや手遅れ。
状況がそれを許さなかった。
(何もこの大雨の中を帰ってこなくてもいいのに)
びしょ濡れになった体にべっとりと毛が貼りつき、小次郎は異様にやせて見えた。