Jully〜あなたと夢を〜
まだ距離はあるから、姿はボンヤリとしか見えないけど…静まり返った駅前の階段前でギターを抱え、歌う男性の姿。
白い息を吐きながら、歩くスピードが早まる。近付きながら、歌に合わせて自然と口づさむ。
階段の前で研二さんは歌っていた。新聞紙を敷いてその上に座り、足元にはマルボロライト。煙草には火が点いていて、白い煙が真っ直ぐ白い空に登っていた。
一緒に歌を口づさみながら、研二さんの横にちょこんと座る。ちょうど私の席なのか、もう1人分の新聞紙が横に敷いてあったから。
誰も居ない駅前に、私と研二さんの歌声。隣に私が居るのを知ってるはずなのに、歌うのを止めない研二さん。
あんなに寒かったのに、こうやって肩を寄せ合ってると自然と暖かい。寒さで震えていた声も元に戻っていく。