ガラス越しの恋
折角のクリスマスイブなのに、何で切ない恋話をしなくちゃいけなくなったんだろう。


「兄ちゃん、ケーキ食べないの?」

「はぁ?ケーキは明日だ!ガキはさっさと寝ろ」

「あっ、そうだ。サンタさん来るんだ」


まだサンタクロースを信じてる達久はDSを高耶くんに返して、部屋に戻って行った。


「あっ!歯を磨いてから寝ろ。またあの惨劇を繰り返すのか?網に入るのも、9歳までだぞ」


晋兄ちゃんは達久を追いかけてリビングから出て行った。


「惨劇ですか?」

「タツは歯医者が苦手なの?でもムシ歯は出来るから晋兄ちゃんが連れて行くんだけど、騒ぐ、泣く、逃げるのオンパレード。もう2度と行くかっ!って言ってるけど毎年ムシ歯は出来るんだよね」


私の時もそうだった。

うちは父子家庭で、忙しい父の変わりに兄が私たちの面倒を見てくれた。


「良い兄さんなんですね。ホストみたいな顔してますけど」

「あれでも立派な郵便局員なんだよ。休日のホストみたいな格好だけど」

「オレも兄貴が欲しかったな」

「立派なお姉さんがいるじゃない」




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