ガラス越しの恋
晋兄ちゃんとは違うだろうけど、千春先輩は高耶くんにとって良いお姉さんのはずだ。


「花蓮さん、どうするんですか?」

「何を?」

「あの人とこのまま付き合い続けるんですか?」

「わかんない・・・」


そうわかんない。

彼とこれからどうなりたいのかなんて分からない。


「私の長所はね。絵を描くと、他のことは考えられなることなの。だから、今度の仕事も光臣くんのことで手につかなくなるくらいなら、最初から引き受けたりしない」

「そうですか。強いんですね」

「どうだろうね。鈍感、いや執着心が無いだけなのかもしれない。私には絵があるからって思っちゃうんだよね」


人としては最低なのかもと笑うと、高耶くんは力一杯否定してくれた。


「そんなこと無いですよ。花蓮さんは素敵ですよ。最低なんかじゃない。あいつのことずっと待ってた姿とか、恋する女そのもだったじゃないですか。不安で泣きそうになってた顔にオレがどんなにっ」

「おーい、高耶。そろそろ帰れ、親が心配するぞ」


晋兄ちゃんが戻ってきて、高耶くんの言葉が途中で遮られた。


「はいはい。帰りますよ。先輩お邪魔しました」


高耶くんを玄関まで送ると、ふいに手をつかまれた。



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