ガラス越しの恋
「高耶くん?」

「あれ、いらないならオレに下さい」


高耶くんが見ているのは、下駄箱の上においていた、光臣くんのプレゼントだった。

帰ってきたときに慌てて置いたままだった。

高耶くんの目は怖いほど真剣で、知らない人、知らない男の人みたいな目だった。


「花蓮さん」


先輩じゃなくてさん付けで呼ばれてるだけなのに、胸がドキドキする。


「送ってきたお礼貰っても良いですよね?」


高耶くんは袋を手に取ると中からマフラーと手袋を出して身につけた。

光臣くんのため作った、紺と紫と白のマフラーと黒の手袋。


「似合ってるね。送ってくれてありがとう」

「あったかいです。さよなら、仕事頑張ってください」


手放したはずなのに、光臣くんの気持ちだけはどうしても私から出て行かない。

あれからケータイはずっと鳴らない。

< 17 / 50 >

この作品をシェア

pagetop