ガラス越しの恋
好きな女を放ってオレは、千春の前にいる。

ちゃんと行くはずだった。

準備もしていた。

誕生日はストラップしかやれなかったから、クリスマスプレゼントも用意していた。

あいつに似合いそうな蝶のモチーフのペンダント。アクセサリーなんて持ってないだろうから、喜んでくれると嬉しいと思いながら選んだのに。

どうしてオレはここにいる。


「柚木さんとお付き合いしてるって聞いたわ」

「あぁ」

「私はきっと彼女に恨まれるわね。折角のクリスマスイブに恋人を盗ってしまったんだから」

「仕方なねぇよ。今日は・・・」


そう仕方ない。


千春が高校卒業してから、会っていなかった。家を出て大学に通っていたことを知っていた。

それが帰ってきていた、千春にばったりと会ってしまった。


「光臣くん久しぶり。また背が伸びたのね」


別れた時とと同じ優しい穏やかな声。

あの頃の記憶が戻ってきそうになった。
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