ガラス越しの恋
「これ返しますよ。もうあんたにも花蓮さんにも必要ないでしょ」

花蓮のケータイを渡された。どうしてこれを高耶が持ってるんだ。


「安心してください。あの人は無事に家に送りました。でも、オレがあのまま声をかけなかったら今でもあそこにいたでしょうね」

いつも飄々としている高耶が珍しく感情をさらけ出して怒っている。千春と別れた時以来だとぼんやりと考えていると衝撃が走った。

目の前がチカチカ光ったかと思ったあとに、頬が熱くなった。


「みんな言ってるよ。あんたは花蓮さんを姉さんの身代わりにしてるって」

「違う!」

「違わないだろ!!だったら何でここにいるんだよ。・・・花蓮さんは知ってると思うよ。あんたが花蓮さんの中に姉さんを見てるって。弟のオレでも似てると思うんだから。あの人は絶対に人を責めたりしない、その強さと優しさにあんたはどんだけ甘えてんだよ」

「違う・・・オレは」

「そんなにうだつの上がらない男だとは思わなかった。曖昧な気持ちで付き合ってんならもうあの人に近づかくな。ってか、もう終わりだよね。これ見てくださいよ」


高耶が指差す先には、見覚えがある色の組み合わせのマフラーが巻いてある。


「花蓮さんがくれたんです。暖かいですよ」


思わずマフラーに手を伸ばした。花蓮がこの色が似合うと言ってくれて編んでくれたオレのマフラーを取り返したかった。

手を伸ばすが、高耶に手を叩き落されて。手が所在無げに彷徨う。



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