ガラス越しの恋
「バカな人だ。そんな必死な顔するなら最初からあの人だけを見てれば良いのに。ちなみに明日、会いに行こうたって無駄ですよ。花蓮さん、でかけるみたいですから」


失礼しますと行って高耶は家の中に入って行った。

「光臣くん、ごめんなさい。

「千春のせいじゃねぇよ。オレのせいだ。あながち高耶のいうことは嘘じゃない」

オレは千春を忘れなれなかった。凛とした強さと芯のある優しさが好きだった。


花蓮に惹かれたのも、千春の面影をみたからだ。顔は千春とは全然違うけれど、絵に対する真っ直ぐで愚直な姿勢。包み込む母親のような優しさが千春を匂わせた。


今更になって思い知った。自分がどれだけ花蓮に甘えていたのか。

花蓮の優しさに寄りかかって、他の女の影を写していた。

どんなに彼女の心を傷つけていたことも知らずに。


オレの中にあるケータイと、高耶の元にあるマフラーが花蓮がオレを見放したことを物語っていた。
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