†鑑査委員制度†
「まだ色々と細かい部分で説明しなくてはならないことがあるのですが、それこそこの制度の成り立ちや細かなルールも各クラスの担任が指導する決まりなんですよね。ですが、詳しい事は明日にしましょう。今日はもうだいぶ遅くなってしまいましたし」
まるで一人ごとのようにそう答えてから、先生は教室に掛かっている時計を見上げた。俺も釣られて同じように時刻を確認する。
ちょうど18時45分といったところだろう。
俺は明日もあるのかと内心げんなりとしたが承諾し、先生と一緒に教室を出た。
廊下や階段を下りている間、互いに沈黙を守って間合いをとっていた。
今までまともに話した事が無かった俺たちの距離感は正直微妙なところだ。
今更ながら気まずく思う。
そんな中沈黙を破ったのは、意外にも先生の方だった。
ちょうど職員室のある3階へ降っていた時のことだ。突然思い出したように尋ねられた。
「瀬川くんは、確か地方生でしたね?」
「はい」
「電車通学にはもう馴れましたか?」
「ええ」
地方生というのは俺のように県外から電車やらバスを乗り継いで通っている生徒の事を指す。
「そうですか」
短い会話はまた途切れ、そうしているうちに3階に着き、先生は職員室へ俺は帰宅のため玄関へとここで別れる事になる。
「それじゃ僕はここで」
先生は軽く手をあげ、挨拶もそこそこにさっさと踵を返して立ち去ってしまった。
俺はそんな先生の背中を少し目を細めて見送った後、自分も帰ろうと向き直り再び階段を降りだす。